教室長のきまぐれ日記ー友だちは大切にー
もうすぐ夏本番です。
夏休みに向けて、子どもたちの心も高鳴る時です。
スポーツや友だちとの遊び、家族で出かける旅行。夏休みでないとできないいろんなこと。子どもたちには、ぜひともいい思い出を作ってほしいと思います。
夏休みと言えば私などは、小学生時代に毎日のように夕ご飯ぎりぎりまで、近所の幼なじみの友だちと遊んだことを、懐かしく思い出します。
私が生まれ育ったのは富山市内の中島という所で、小学校は奥田北小学校に通いました。
当時毎日のようにいっしょに遊んだ友だちとは、その後時が経つうちに、次第に付きあいも薄れ、気がつけば永らく互いに連絡もしないままになっています。
幼なじみとはそういうものだとも思う一方で、子ども時代を終えた後何十年経っても、親しく付きあいを続け、何かことがあると家族同様に、というか場合によっては家族以上に助けとなることがあるという話を聞いたりすると、驚くとともに、実にうらやましいと感じます。
人が生きていく上で友だちの存在はとても大きな意味を持つと思いますが、幼なじみの存在というものが持つ意味は、また特別であるのかもしれません。
幼年期をいっしょに過ごし、反抗期や思春期をいっしょにくぐり抜けていく友だちとの間には、特別な信頼感が育つものなのかもしれません。成長期の子どもにとって、大人の世界は、いわばすぐ身近にある外国のようなものではないかと思います。成長しつつある子どもにとって大人の世界は、いずれは、といっても現実にはもう間もなくですが、その中に自分も入っていって、その中で自分もまた大人として生きていかねばならない世界です。それは子どもにとっては理解するのがとても難しい文字通りの外国でありながら、いずれ近いうちには必ず自分もまたその国の国民にならなければならない、そういう実に奇妙なものではないかと思うのです。
私のような者は、幸か不幸か、完全には大人になりきれないまま今に至っているようなところがあり、しかも、それがあるからこそ人間世界のことをいろいろ変わった角度から眺めてみることもできるのだと、勝手に思い込んだりしているのですが、そういう私でも、子ども時代から大人の時代への橋渡しは、さまざまな紆余曲折を経験し、決してすんなりとはいかなかったように覚えています。その経験の中で、幼なじみの存在は、単なる遊び相手であることを、はるかに、それも天文学的に超えて、大人になるための数々の試練をいっしょにくぐり抜けていってくれる同志のような意味を持っていたように思います。自分独りではとうてい太刀打ちできない大人の世界を前にして、知恵の限りを尽くしてともにこれと闘い、一方でまた温室の中で甘んじて守られていたいと願う自分の中の幼児性ともいっしょになって闘ってくれる同志です。
私にもそういう幼なじみがいて、時にはけんかしたりもしながら、それこそ物心がつく前から、小学生時代を中心として、その後は次第に付きあいが薄れてはいきましたが高校を卒業するぐらいまで、いろいろなことをいっしょに経験することができました。きっとその友だちがいてくれたおかげで、私もどうにか大人になり、曲がりなりにも今こうして生活できているように思います。
その友だちともその後すっかり疎遠になってしまいました。大げんかをして別れたわけではありませんが、いつの間にか行き来をしなくなって今に至っています。しかしその友だちといっしょに過ごした昔の日々を忘れるようなことは、今の今までほんの一瞬たりともなかったと思います。
その後もたくさんの人と友だちになり、その中にはその幼なじみと過ごした以上の間ずっとよい友だちであり続けてくれている人もいます。しかし物心がつく前から大人になるまでの長い波乱の時をいっしょに過ごしてくれたその幼なじみとの思い出は、やはり私にとっては別格で、良くも悪くも(?)自分がこの世界と向き合う際の姿勢の、一番基本的な部分を形作ってくれているように思います。
友だちは大切にするべきだと思いますが、この世界で自立して生きていく上では、それが必ずしも思い通りにならない、できないこともままあるでしょう。かつての友だちとの現実の付きあいをおおかた諦めなければならないことも、大人になれば普通にあるでしょう。しかしそういう友だちといっしょに過ごした思い出の数々は、決して風化することはないのかもしれません。
いったん大人になってしまうと、自分が子ども時代を脱して大人になる過程で、どれほど苦難の道を歩いたかということを、つい忘れてしまうことが多いのではないかと思います。我が子の遊ぶ姿を見ていて、子どもは気楽でいいなとさえ、思えてくるかもしれません。しかし子どもが大人になるということが当の子ども自身にどれほど大きな犠牲を強いることであるか、そのことを考えてみるなら、子どもは気楽とばかりは言っていられなくなります。そしてそう考えてみると、子どもにとって友だちというものがいかに大切であるかに、今更ながら思い至ります。
子どもたちにはこの夏休みを、ぜひとも思い出深いものにしてもらいたいと思います。
水橋校 涌井 秀人