家庭学習は気負わず、楽に
あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。
さて、昨年最後の「アルファ通信」では、学業成績を上げるための勉強以外の条件について、思うところを少し述べさせていただきました。その後年末にかけて多くの保護者の方々とお話をさせていただくなかで、とても重要なこと(と私には思われるのですが)に今さらながら気がつき、それからずっとそのことを、考えるでもなく考えてきました。成績を上げるためには家庭学習の習慣が絶対に必要だと思いますが、私も含めてたいていの親御さんは、いや親御さんだけでなく子どもたちでさえも、家庭学習の習慣を確立するためには、乗り越えなければならない高いハードルがいくつもあると、恐らくは無意識に考えがちなのではないかということです。
家庭学習を、何か非常に折り目正しい、きちんとメリハリのある整ったもの、あるいは何か修行のようなものと考えて、いたずらにハードルを高くして、日々小さな挫折を繰り返しているようなところはないでしょうか。
私が思うに、子どもにとって家庭とはまず第一に癒しの場です。友達や学校の先生などとの一筋縄ではいかない人間関係にもまれ、また好きでやっているのではない勉強に関して(そりゃそうです。勉強を好きでやっている子などまずいません)、怠けているとか努力が足りないとか散々なことを言われたりして、成長まっただ中で心の生傷の絶えない子どもたちは何よりもまず心の癒しを求めています。家で誰はばかることなくだらしなくしたり、道理に合わないわがままな屁理屈を言って大人を困らせたりするのも、大人に劣らず外から疲れて帰って来る子どもにどうしても必要な休息の一環だと思います。
親であれば我が子のだらしなさを目にして小言の1つも口にしないわけにはいかないでしょうが、そういう小言に必ずと言っていいほど反抗的な態度をとる子どもの側にも、単に反抗期と片付けて済ますわけにいかない切実な事情があることを、大人は分かっていてやる必要があると思います。
子どもにとって家庭がまず第一に癒しの場であるとすると、そこを修行の場にしようと考えることは、家庭を大きな矛盾をはらんだ場にしようとするのに等しいでしょう。
矛盾のある所には緊張が生まれます。この緊張は子どもの成長を妨げるものではなく、上手にコントロールすることができれば、成長を大いに促すものであるように思われます。
子どものだらしなさは、放っておけば野放図に拡がっていくばかりとなって、後で本人も周りの大人も手痛いしっぺ返しを食らうことになるでしょう。でもだからと言ってそういうことを一切認めないというのは、子どもの成長に蓋をするにも等しい野蛮なことだと思います。
私も含めてたいていの大人が誤解していると思われることは、家で勉強しない、ゲームやテレビやパソコンなどといっしょにだらだら過ごす我が子の姿ばかりが目について仕方がなくなると、スパルタ教育よろしく我が子を是が非でも叩き直さねばと考えてしまうところではないかと思います。
でもこれは相当に無理がある行き方だと思います。それほどまでふがいないと思える我が子の姿は、親である自分の生き方・あり方のほとんど忠実な生き写しではないかと思って、子どものありようを改めさせる前にまずは親である自分からと考えて、自らを叩き直そうとする人は、誠実ではあるけれど、何の変哲もない風車小屋を不倶戴天の怪物と思い込んで突進する哀れなドン・キホーテにもちょっと似ています。
子どもは親のすることの真似をするとよく言いますが、そういう親をもつ子もまた、ある意味親以上に無鉄砲だったりします。
私はいろいろな子どもを見てきましたが、勉強ができる子はほぼ例外なく、何らかの形で家庭学習の習慣が身についています。何らかの形で、と言うのは、それが親御さんから見て勉強しているようには見えないことがよくあるからです。勉強の習慣のある子は、決して勉強を堅苦しく修行のようにやっているわけではありません。そういう子の勉強する場には、ラジカセやiポッドから流れる好きな音楽があったり、すぐ手が届く所にマンガやファッション雑誌が置いてあって勉強しながらちょくちょく手にとって眺めたり、といったことが当たり前にあります。
うちの子もそうだけど勉強する姿は見たことがないし成績も悪い!と思われる親御さんもおられるでしょう。勉強の習慣がある子とどこが違うのでしょうか。私自身の子ども時代を思い出しつつ考えてみると、そういう子は、癒しとしての家庭生活と、元来好きでやっているのではない勉強を、上手にリンクさせることができているように思います。要するにだらだらしたり遊んだりする時間と勉強する時間との間に高い敷居がなく、遊びから勉強へ、勉強から遊びへと、比較的自由に行ったり来たりしながら、その子ならではの自分の時間と言えるものを作っているのです。
難しそう・・と思われるかもしれませんが、要は気楽に一歩踏み出すことだと思います。勉強を始めるのに遊びや息抜きを諦める必要はないのです。take it easyが何をやるにしても長続きの秘訣です。無理せず、楽に、が大切だと思います。
水橋校 涌井 秀人