藤城清治 光よろこびメルヘン展
富山県立近代美術館で9月から11月までの約3ケ月開催されていた企画展に行って来ました。きっかけはNHKのテレビ番組「NEXT 未来のために」を観て、実際の作品を見たくなったからです。
藤城清治さんは光と影でメルヘンを描いてきた92歳の影絵作家。もう70年もカミソリの刃を直接手に持ち、躍動感のある作品を生み出しておられます。
私が一番見たかったのは、番組でも紹介されていた「平和の世界へ」という、鹿児島から特攻隊として飛び立った友を思い、自分自身が経験した戦争と向き合いながらつくった作品です。
大きく空にかかった虹に零戦の飛行機が飛んでいく。地上には満開の桜が咲き、舞い散っています。きっとその花びらひとつひとつが、戦場に散っていった多くの命。そして虹の下には風船を持ったこびとが描かれています。
彼はこびとをこの絵の中に入れるか否かで迷いますが、入れることにしました。この作品だけでなく、広島の原爆ドームや、東日本大震災の被災地の絵にも、こびとが一緒に描かれています。
藤城さんは生きる喜びを感じてほしくて、こびとを描くのだそうです。人を喜ばせるのが大好きな方なのですね。今回この展覧会のサイン会の際に来県され、新湊の曳山祭りをご覧になり、この会期に間に合うように作品を一つ仕上げられました。この御年ですごいエネルギーだと思います。
この展覧会もリピーターがたくさんおられたと聞きます。私は会期終盤で行ったのでかないませんでしたが、その気持ちがよくわかります。どれだけ見ても見飽きません。どうやって作ったのだろうという疑問を持って見入ったり、絵に描かれた風の音が聞こえてきそう、と感じたり、興味は次々とわいてくるのです。きっと藤城さんの情熱が作品を通して私達に力を与えてくれるのでしょうね。とても充実した一日となりました。