キッズだより 10月号
匂いの記憶
雨の降り始めた夕方、まだ蒸し返すような風にのってキンモクセイの甘い香りが漂ってきました。滑川校のすぐ近くの公園から届いたものでした。また、子供を学校に送り出す時、澄んだ空気の中にかすかに甘い香りが漂っていました。我が家の庭先にキンモクセイの花がぽつぽつ咲き始めたようです。
キンモクセイの匂いにも、ひとくくりにしてしまうことができない、微妙な違いがあることに気付きました。それと同時に、人間の嗅覚と記憶には密接な関わりがあると感じました。
例えば、運動会のお弁当に入っていたミカンの匂いの記憶。早生のまだ緑色がかったミカンをむいたときに広がる爽やかな甘酸っぱい匂い。冬に食べるミカンとは違い、今年一番に私の手元に届いたミカンは特別な感じがしました。そして、私自身も何か特別な人になったように思えて、苦手な徒競争も頑張れた記憶があります。
先日我が子が私に近づいてきて、「おかあさん、いい匂いがする。」と言いました。それはどんな匂いだったのでしょうか?おふとんを干した時のようなお日様の匂いかしら、それとも料理をした時についた匂いかしら、はたまた、今流行りの洗剤を使った洗濯物の匂いかしら…。
匂い自体は、日常のありふれたものだと思うのですが、その時の私、「おかあさん」は笑顔だったと思います。
人の匂いとは、人が生活する姿そのものだと思います。そしてそこに笑顔がプラスされれば、子供は「いい匂い」と感じるのではないでしょうか。
しかし、いつも笑顔ばかりでいることはできません。色んな母の姿を見せながら色んな母の匂いを感じ取ってくれればうれしいと思います。